カイン―自分の「弱さ」に悩むきみへ (新潮文庫)



カイン―自分の「弱さ」に悩むきみへ (新潮文庫)
カイン―自分の「弱さ」に悩むきみへ (新潮文庫)

商品カテゴリ:人文,思想,学習,考え方
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認識から始めよう

鋭敏すぎる心を持ちながらも、適応能力に欠けるため、生きにくさを感じている「カイン」たちに贈るメッセージ。
この本を読みながら、私もカインの要素が少なからずあると思った。また実際に日常生活において、生きにくさを感じることが多い。
そういったカインたちに時には同情し、時には甘さを指摘しながら、誰よりもカインであった筆者が、どのように強くなっていったのか。
読んでいて涙があふれてしまった。生きにくさなど共感できる人はいないと思っていた。その共感によって救われた。張りつめていたものがはじけてしまった。
筆者なりの解決法を示してあるが、まずは自分とマジョリティーの認識から始めよう。

あとがきは山田詠美が書いているが、山田にはわかるまい。わかる人に書いてほしかった。決してこの書は、生きにくい人々を甘やかしているだけではないのだから。
これがレビューと言えるのか、書こうか、書くまいか、迷ったが、書いてしまおう。

 この本を読んだ私は、当時、この本の副題どおり、自分の「弱さ」に悩んでいたに違いない。それは、確かだ。そして今でも。それも確かだ。しかし、私がこの本を手にした理由は、別にあった。「カイン」の文字を目にしたとき、これは、あるいは、信仰の書かも知れぬ、と独り合点したのである。当時私は、太宰治とキリスト教との関わりに興味があった。太宰は、『聖書』に励まされたことを私は知ったからである。太宰を励ました『聖書』とは、いったい、何なのか。私は何か、ヒントがほしかったのである。
 中島さんは確か、この本の中で、ヨブ記を引いておられたのではなかったか。感銘は覚えたが、信仰にはいたらなかった、そう告白されていたのではなかったか。私自身もまた、『聖書』には触れたが、信仰に入ることはなかった。敵を愛せ、というイエスの言葉に美を感じるものの、敵を愛せば、その頭の上に炭が築かれるであろう、という言葉は、なにか(裏切られた〉という感じがしたものだ。
 この本を読んで、私は偶然、アンデルセン童話「雪の女王」の存在を知った。悪魔は自分たちで作った鏡を落としてしまう。その破片が、目の中に入ると、何もかもがあべこべに見えてしまう。そんなところから、この童話は始まるのだが、この話と太宰の「雪の夜の話」に出てくる水夫の話とはリンクスしているのではないか。「雪の夜の話」では水夫の目の中に、燈台守一家の団欒の光景が残されていた、という話が出てくる。太宰が「雪の女王」を踏まえて「雪の夜の話」を書いたとしたら、水夫の目の中に残っていた光景もまた、あべこべに写った光景だったのではないか。さらにこの話は、兄弟の目にある塵を取ろうとするな、自分の目にある梁木をまず取り除け、という聖句ともリンクスしているのではないか。これらの着想を得られたのは、中島さんの、この著書のおかげである。神は、あるいは、あるのかもしれない。
怒り方のレッスン

今の世の中、普通に生活していても、怒りの感情がわき起こることってたくさんある。しかも、それを抑えていることが非常に多い。怒りという感情について、改めて考えさせられた1冊で、非常に面白かった。なぜ、今、少年達がキレやすいのか、ということにも触れ、怒りの表現方法から、怒りの受け止め方まで、怒りのコミュニケーション方法に非常に共感が持てました。自分を表現する、主張することの大切さ。是非、親や、教師に読んでいただきたい1冊です。
「やさしさ」を場合によって使い分ける智慧のある常識人にとっては胸が痛む本

自分の優しさに苦しみそこから抜け出すことができず悩んでいた著者が、怒りの発しかたを学び、強さを身につけていく過程を告白した本。私たちは死から目を背けているのではないか、優しさを自分の都合に合わせて使い分けているのではないか、鈍感な凡人である私にとっては刃を突きつけられるようだ。著者にとって哲学は生きるすべであることが痛いほど感じられ、人生における哲学の重要性がわかり、カントの「純粋理性批判」などを読む気にさせてくれる本。著者の母との関係はアウグスチヌスと正反対、哲学者の「告白」としては同類の本であっても、こちらはただひたすら悲しい本。
自己愛、自意識の強い人におすすめ。劇薬。

 中島義道は多くの本を出版しているが、大別して「雑文系」「哲学系」のものに分けられる。このうち、「哲学系」のものは自分には難しすぎて、的確なレビューがかけないので、「雑文系」の本の中でも白眉の『カイン』についてレビューを書いてみたい。

 副題に「自分の「弱さ」に悩むきみへ」と書いてある通り、自分の「弱さ」に悩んでいる人が読めば良い。この本を真正面から、娯楽とか純文学とかそういうものとして読むと痛い目を見る。この本の中には、中島義道独自のマジョリティに対する恨みつらみや、ナルシシズムにとりつかれたような「クサい」表現も見られるのだが、それが独特の空気を生み出していて、いい。各章は特に連続している、というわけでもないので、この本に書いてあることすべてを実行することはない。たとえば「親を捨てる」とか「幸福を求めることを断念する」とかあるが、別に親と仲がいい人はそのまま良好な状態を持続させればいいと思うし、幸福を求めたくてたまらない!という人は無理に幸福を断念しなくてもいい。

 中島義道という人を観察する本としてもおもしろいし、繰り返すが、「自分の「弱さ」」を痛感して路頭に迷っている人にも読んで欲しい本である。



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